6月は光るバラの庭で。-page1-



ボンゴレ10代目は情に厚い人物で、家族や親しい友人の誕生祝いなどは一度も欠かした事がない。
 ……なんていうのは大嘘だ、と、ランボは思う。
 確かにボンゴレは誕生祝いやそのほか記念日を好む。
 けどそれは、とかく身勝手で過激なイベントを好む彼の家庭教師に対抗するために身につけた牽制方法だったり、あるいは、気まぐれで出頭要請にもなかなか応じない問題だらけの守護者たちにどうにか面会するための口実だったり……、ともかく、本当は「おめでとう」の気持ちなんてこれっぽっちもないのだ。ほんのちょっとしかないんだ。
(そうだ、オレは知ってるんだ。あの人たちは本当は、とっても不実で面倒くさがりで不公平で、ともかく、とってもヒドイ人たちなんだ。)


 ◇


 例えば、それは今からおよそ三週間前の雲の守護者の誕生日。ランボはイタリアのとあるホテルの一室にいた。
 ボンゴレ本部じゃないのは、主賓の雲の守護者が、ボンゴレの敷地には一歩たりとも足を踏み入れないと言い張って譲らなかったからだ。まあ、それ自体は毎年のことだけど。
 今年は海の見える街だった。ボンゴレは窓際のソファに座って頬杖をつき、じいっと窓の外を見ていた。
「おもしろい、ですか?」
 ランボの目に映るのは、どこまでも青い海とどこまでも青い空と太陽と、その程度のものだけだった。けれど、ボンゴレの目にはもしかして特別なものが見えているのかもしれない。
 少なからぬ期待を込めてランボは訊いてみた。
「いや、全然。」
 気のない返事にランボは拍子抜けした。
「……じゃ、なんで見てるんですか。」
「だって普段窓際に行くとさ、狙撃されるから離れてくださいってうるさいんだもん。獄寺君。ここ、海に面してるからその心配ないし。それに、」
 ボンゴレはちらっとドアの方に目を遣って、またすぐ海に目を戻した。
「あの集団、正直恐くて関わりたくないんだ。」




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.08.08.11